ライブ・エレクトロニクス作品展
ライブ・エレクトロニクス作品展
2024年11月11日(月)
時間:18時30分開場・19時開演
場所:東京藝術大学 千住キャンパス 第7ホール(東京都足立区千住1-25-1)
ミュージック・コンクレート(Musique Concrète)や電子音楽(Elektronische Musik)などの電子音楽の探求を勧めた作曲家たちは、やがて電子音響と器楽とを融合させるミクスト音楽作品の実験を始めるようになりました。その中で電子音響をライブで操作しながら器楽とのリアルタイムでの操作を行う試みが生まれ、そういった「ライブ・エレクトロニクス」の実験は今まで続いてきています。
今回はそのようなライブ・エレクトロニクスの歴史をたどりつつ、ライブ・エレクトロニクスに挑む新たな作曲家たちの新曲を中心に選曲されました。過去の作曲家達が電子音響を用いてどのような思考を持って、どのような実験を行っていたかを手掛かりに、その思想が今の時代の作曲家によってどのように進化してきたかを俯瞰してみることは、電子音楽を鑑賞するにあたって有意義な行為であるとも言えるでしょう。なお今回のコンサートではゲスト演奏者として打楽器奏者の會田瑞樹さんを迎え、ヴィブラフォンとコンピュータのための作品はもちろん、彼の得意な分野であるヴィブラフォンソロ作品も披露します。電子音楽に慣れていない方を含め、ライブ・エレクトロニクスの世界を皆さんと一緒に楽しんで頂けたら幸いです。
― 林 賢黙(東京藝術大学 音楽文化学 音楽音響創造 博士課程)
プログラム
高橋侑大:通信の彼方からの…(2024)*F
顧昊倫:質壁分離:嫉妬(2024)*C *P
ジャチント・シェルシ:エツィー(1974)*P
シュテファン・プリンス:ピアノ・ヒーロー#1(2011)*P
後藤英:コライヴィブ(2024)*V
パオロ・リッチー:忘れられた時間からの…(2021)*V
ニーノ・ヘルベリ・ホカンソン:遠い過去からの断片(2021)*V
ニコス・ハリザノス:オートキニシス(2021)*V
*F: フルート: 出口夢果
*C: チェロ: 北嶋愛季
*P: ピアノ・キーボード:林賢黙
*V: ヴィブラフォン:會田瑞樹
Yudai Takahashi – From Beyond the Communication… (2024) *F
Haolun Gu – Plasmolysis: envy (2024) *C *P
Giacinto Scelsi – Aitsi (1974) *P
Stefan Prins – Piano Hero #1 (2011) *P
Suguru Goto – Collivibe (2024) *V
Paolo Ricci – …du temps perdu (2021) *V
Nino Hellberg Håkansson – Fragments from a distant past (2021) *V
Nickos Harizanos – Autokínisis (2021) *V
*F: Flute: Yumeka Deguchi
*C: Cello: Aki Kitajima
*P: Piano, Keyboard:Hyun-Mook Lim
*V: Vibraphone:Mizuki Aita
プログラム・ノート
高橋侑大:通信の彼方からの...
Yudai Takahashi - From Beyond the Communication...
本作のテーマは携帯電話というメディアを通してメタフィジカルに伝えられる「死」である。例えば、映画などで電話が突然途切れると相手が死んでいたという場面があるが、これは電話の通信の断絶を「死」のメタファーとして扱っている例である。また、使われていない電話番号に電話をかけた際に相手の携帯電話から「おかけになった電話番号は現在使われておりません」というメッセージが無機質なナレーション音声で流れることがある。電話番号を変更した可能性もあるが、相手がもう亡くなっていて電話を使わなくなったという可能性も高く、これも電話を通じて我々に誰かの死が暗示されているという状況である。このように電話を通した死のメタファーや暗示はいくつか存在しうるように思う。このことを考えたのは、怖がりであった幼少期の私自身の些細な経験からであるが、電話がこれほどまでに普及している状況を踏まえると誰もが体験しうる可能性がある。電話というのは無機質な物体であり、また流れるメッセージの音声も淡白な声であり、相手の応答がない場合、不安を抱かせることもある。通信の向こう側がどうなっているのかわからないという意味で、不確かである電話というメディアが暗示する誰かの死に対する不安感をフルートの音型と、そこにに付与されるエレクトロニクスの音により描写しようと試みており、そこに携帯電話から流れる音声が絡んでいくような構成となっている。いつか私の電話番号も使われなくなることを考えながら。
顧昊倫:質壁分離:嫉妬
Haolun Gu - Plasmolysis: envy
私はあなたの森に踏み迷い
やがては野垂れ死にするのかもしれぬが
そんなわたしのために歌われるあなたの挽歌こそ
他の誰の耳にもとどかぬものであってほしい
谷川俊太郎は嫉妬を人間の5つの感情の中の1つだと考え、かつてそれを題に、自分にとって全く未知の存在である仮想の世界にしかいない「あなた」へ恋歌を送った。人間は、独占の感情からなる動物でもあって、今際の際に臨んでも、それを欲する。本作においても、会場には現れない「どなた」に、音の響きで織り交ぜた真情と虚想を、浸透したり、共有したりしていくうちに、嫉妬の妄執から自由になることを描く。
ジャチント・シェルシ:エツィー
Giacinto Scelsi - Aitsi
ジャチント・シェルシは1950年後半より微分音やそれによる持続音に興味を持つようになり、それ以来ピアノ作品を書くことはなくなった。『エツィー』(この神秘的なタイトルはギリシャ語で「原因」を意味する「aitia」より由来したという説もあるが、確実な語源は伝わっていない)は他の作品「別れ(un adieu)」を除き、後半のシェルシの作品の中では唯一なピアノ作品となる。この作品ではライブ・エレクトロニクスによる和音の電子的な歪曲(ディストーション)が徐々に自然なピアノの音として純化し、徐々に消えていく43の持続和音のパターンとして構成されており、(電子的な手段を伴った)ピアノの音色の持続的な変化はシェルシが後半の作品で持続的に見せた音色の微細な変化に対する興味と相通するだろう。
・解説:林賢黙
シュテファン・プリンス:ピアノ・ヒーロー#1
Stefan Prins - Piano Hero #1
この作品は4つの作品からなる『ピアノ・ヒーロー』連作の第1曲目の作品であり、この連作は作品に対する観覧者の没入をテーマとして作られている。舞台ではキーボードの演奏者とスクリーンに投影されている「仮想のピアニスト」が存在しており、観客はまるでキーボード奏者とスクリーンの「ピアニスト」が現実の舞台で二重奏を行うような状況に没入することになる。またはまるで映画のように、スクリーンの中の状況に専ら没入することもできるだろう。作品の途中ではこの没入を突然邪魔する場面があり、その後再び没入の瞬間が訪れるが、観覧者が再び没入する際の感想はその以前とまた違う印象を持ってしまうだろう。ブレース(J. Blais)とイッポリート(J. Ippolito)の言葉を引用すると、「我々が没入から現実に戻ったとき(中略)、突然(免疫的や思想的な)システムが変わり、何も前と同じではなくなるのだ」。
・解説:林賢黙
後藤英:コライヴィブ
Suguru Goto - Collivibe
『Collivibe for Vibraphone and Live Electronics』は、言葉そのものが象徴する通り、「Collision(衝突)」と「Vibraphone(ヴィブラフォン)」という異なる要素が融合することで生まれた独自の音楽作品である。作品名に込められた「衝突」は、楽器のアコースティックな響きと、リアルタイムで処理される電子音との間で生じる音響的なインタラクションや共鳴を象徴している。このシリーズは、近年、ヴィブラフォンとライブエレクトロニクスを用いた作品が多数制作されており、伝統的な楽器と現代的なテクノロジーを掛け合わせた新たなアプローチが模索されている。 通常のコンセプチュアルな作品とは異なり、この作品は楽器そのものの音響特性と、それに対する電子的処理の可能性を最大限に引き出すことに重きを置いている。ヴィブラフォンが持つ温かみのある音色や、微細な音の振動、さらには打楽器としての特徴的なリズム感が、電子音の瞬時に変化するデジタル処理と衝突し、共鳴し合うことで、予測不可能な音響世界が創り出される。 本作では、ヴィブラフォンの一打ごとに生じる音が、リアルタイムで電子的に変容し、空間内に広がる音像を複雑に変化させるプロセスが重要な役割を果たしている。このプロセスによって、聴衆は一瞬一瞬の音響変化に耳を傾けることが求められ、まるで音楽が目の前で生まれ変わり続けるかのようなダイナミズムを体感することができる。 本シリーズにおいては、単に技術的な実験に終始するのではなく、楽器そのものの特性や、演奏者の身体的な動きとの相互作用を大切にし、音楽的な表現を深く探求している点が特徴である。ヴィブラフォンとライブエレクトロニクスの融合により、新たな音楽の可能性が広がり、アコースティックとデジタルの境界を超えた音楽表現が展開されている。
パオロ・リッチー:忘れられた時間からの…
Paolo Ricci - ...du temps perdu
「…時間の匂いは消えて行く、
それは二度と戻らない、
それは忘れられた。」
私の作品「忘れられた時間からの…」(無駄になった時間)はこのような、Webで偶然見つけた詩の一句から生まれた。最初は微かな(ラヴェルのような?)フランスの匂いがする、すごく穏やかで、自己診断的な音のマテリアルが現れる。この最初のマテリアルは楽譜の他の所でもう少し音色的パラメーターを変えながらまた登場する。この場面は、この素晴らしい楽器の様々なテクニックを探査する機会を与えるヴィルトゥオーゾ的でもっと暖かい要素と一緒に配置される。曲の最後は我らに穏やかで静かな瞬間を与える。それは殆ど我らの内的な平和を再び探す瞬間でもある。
・翻訳:林賢黙
ニーノ・ヘルベリ・ホカンソン:遠い過去からの断片
Nino Hellberg Håkansson - Fragments from a distant past
私はいつも都市環境の中で過ごしていた。そしてそのせいでスウェーデンの民俗音楽とは縁がないと思っていた。私はそれらを子守歌や声楽のための編曲として(様々なクォリティーを持って)素材として使っていた。民謡は私の記憶の中で混ざっており、それはとても興味深かった。しかし私の音楽的な自我が育つほど、これらの民謡のメロディーは実は互いに似ていることに気づいた。私はこのような似通った民謡たちを収集し、それらを私の「間違った記憶」として作品に表現すればきっと面白そうだと思ったのだ。
使われた民謡:Vem kan segla förutan vind (実はこれはフィンランドの民謡だった!), Om sommaren sköna, Uti vår hage, Till Österland vill jag fara, Vårvindar friska, Ack Värmeland du sköna!
・翻訳:林賢黙
ニコス・ハリザノス:オートキニシス
Nickos Harizanos - Autokínisis
作品のタイトル「オートキニシス」はギリシャ語の「オート(Auto)」と「キニシス(Kinisis)」を組み合わせたものである。「オート」は英語でも分かるように「自分自身」を、「キニシス」は「動き、アクション」を意味する。故にこのタイトルの意味は「自ら動く」、「自分一人で動く」になるだろう。この作品の正確もまさにそうであり、この作品ではこのアイデアに基づいた幾つかのリズムパターンとして構成されている。2番目のゆっくりしたパートでは神秘的なキャラクターと和声を持っている。3番目の素早く短いパートが続き、最初のパートを参照する。やがてこの作品はヘラクレイトス(Heracletus)の言葉と一緒に終わる:人間の性格が人間の動き(「キニシス」)に導くのだ。
・翻訳:林賢黙
プロフィール(作曲家)
高橋侑大/Yudai Takahashi
2004 年愛知県生まれ。これまでに作曲を植野洋美、後藤英の各氏に師事。現在、東京藝術大学音楽環境創造科2年在籍。
顧 昊倫/Haolun Gu
中国・蘇州市生まれ。2017年上海音楽学院音楽設計と制作科を首席で修了し、2020年東京藝術大学大学院音楽音響創造科修士課程を修了。現在、同大学院博士課程に在籍。作品は、上海電子音楽週間、ニューヨーク電子音響音楽祭、国際コンピュータ音楽会議などに取り上げられているほか、アンサンブル・アッカ20周年記念コンサート公募入選、世界各地で演奏されている。第7回両国アートフェスティバル招待作曲家。これまでに作曲を秦毅、尹明五、陳強斌、西岡龍彦、後藤英の各氏に師事。
ジャチント・シェルシ/Giacinto Scelsi
貴族の末裔として生まれ、Giacinto Sallustioに作曲の手ほどきを受け、1935年から36年にWalter Kleinに十二音技法を師事した。1945年以降、他の作曲家との「共同作曲」という作業形態をとり、少なくとも1970年代までこのメソッドで作品を量産した。1980年代に入ると自作の販促活動および作曲技法伝授が主になり、アンサンブル・シッダルタ、アンサンブル・2e2mなどとのコラボレーションで知られた。ダルムシュタット夏季現代音楽講習会にも招かれた。
シュテファン・プリンス/Stefan Prins
アントウェルペン王立音楽院(オランダ語版)で作曲学んだ後、ブリュッセル王立音楽院、ハーグ王立音楽院で電子音楽を学ぶ。その後、渡米し、ハーバード大学にて博士号を取得。ダルムシュタット夏季現代音楽講習会クラーニヒシュタイナー音楽賞、ベルリン芸術賞、ISCMヤングコンポーザーズアワードなど、多数の受賞歴がある。現在、ドレスデン音楽大学教授。
後藤 英/Suguru Goto
作曲家、ニューメディア・アーティスト。国際的に評価されており世界活地で活躍。刺激的な作品で新たなテクノロジーと関連させて発表している。フランス、パリにあるポンピドゥー・センターのIRCAMの招待作曲家、研究員、ボルドー芸術大学の准教授を経て、現在は東京芸術大学の准教授。 主な賞歴は、ボストン・シンフォニー・オーケストラ・フェローシップ、タングルウッド音楽祭より、クーセヴィツキー賞、ワシントン州のマルゼナ国際作曲コンペティションにて第1位、ドイツにてベルリナー・コンポジション・アウフトラーゲ1994、パリのユネスコで行われた、IMC国際作曲家会議にて入選、フランス政府よりDICREAM、ドイツ、ベルリンのミュージック・シアター・ナウ・アワード2008にて受賞、フランス、バン・ニューメリック4、アンガン・デ・バン・デジタル・アート国際フェスティバルにて、「OFQJダンス・ニューテクノロジー賞」を受賞、2010年ブラジルのFileフェスティバルにてFILE PRIX LUXのElectronic Sonority Honor Award 賞、2011年イタリアにてAction Sharing 2の大賞を受賞、2013年KAO国際キネティック・アート・コンペティションにて第2位、同年オーストリアのアルスエレクトニカにてデジタル・ミュージック&サウンド・アートの栄誉賞を受賞などが挙げられる。作品は世界各国の音楽祭、レゾナンス/IRCAM、タングルウッド音楽祭、ICC、SONAR、 Haus der Kultures der Welt, ISEA、NIME, ヴェネツィアビエンナーレなどにて演奏されている。http://gotolab.geidai.ac.jp/
パオロ・リッチー /Paolo Ricci
ペーザロ音楽院でピエロ・ルイジ・ザンジェルミに、ペスカーラ音楽院でフランコ・ドナトーニに師事。
1984年、室内楽作品「Sentieri nel canneto」で権威あるヴァレンティーノ・ブッキ賞を受賞し、ローマで最初の重要な評価を得る。
トリノのUnione Musicale、アムステルダムのGaudeamus Musicweek、モンテプルチアーノのCantiere Internazionale d’Arte、ボストン大学のAspekte Neue Musik of Salisburgo、ミラノとトリノのStagioni Sinfoniche RAI、メキシコのPresencia de Italia、ウディネのFestival Risuonanzeなど、彼の作品が様々な重要な音楽イベントや音楽祭で演奏され始めた頃、数々の国際コンクールでの受賞も増えていった: ポリフォニック作曲コンクール 「Guido d’Arezzo」(1986-1992)、「G.B.Viotti」(1984)、Leuven Concours Européen Musique et Poésie{B}(1986)、Bydgoschの 「Musica Antiqua Europae Orientalis」(1986)、ローマの 「G.Savagnone 」コンクール(1987)など。
ニーノ・ヘルベリ・ホカンソン/Nino Hellberg Håkansson
ニノ・ヘルベリ・ホーカンソンは几帳面な作曲家である。学士論文では、3つの異なる作曲方法で作られた3つの作品を検証している。1つ目は、まず作品の形式を練り上げ、その構造に従って詳細な素材を作り上げる方法。二つ目は、小さな音楽の断片に直接取り組み、それを後で大きな形に組み立てる方法である。第3の方法は、最初の2つを組み合わせたもので、音楽の断片に取り組みながら、それをはめ込むための大きな形式を持つというものだ。
ニコス・ハリザノス /Nickos Harizanos
アテネ生まれ。アテネで作曲、管弦楽法、和声学、対位法を学んだ後、マンチェスター大学で研究を続け、作曲の研究修士号(MMus)を取得。2014年、バンガー大学で作曲の博士課程に進む。彼の音楽は34カ国(アメリカ、カナダ、ロシア、オーストラリア、中国、日本、イギリス、メキシコ、韓国、コロンビア、アルゼンチン、モロッコ、ドイツ、フランス、オランダ、ベルギー、スイス、クロアチア、ルクセンブルク、ブルガリア、スペイン、イタリア、ポルトガル、ラトビア、ポーランド、ウクライナ、チェコ共和国、リトアニア、アルバニア、ハンガリー、ルーマニア、セルビア、キプロス、ギリシャ)で演奏されている。国際・国内作曲家コンクールで数々の優勝や優秀賞を受賞。彼の音楽は、ギリシャの国営テレビ局やラジオ局、国際テレビ局(スペイン)、スペインのラジオ局(スペイン国営ラジオ(RNE)、メキシコ)、アメリカ、ポルトガル、チェコ共和国、コロンビアの民間放送局で放送されている。) また、ギリシャとイギリスでは、劇場やドキュメンタリーの音楽も手がけている。出版物は、ドイツ国立図書館、シューマン図書館(ドイツ)、コロンビア大学(アメリカ)、王立音楽アカデミー(イギリス)、リリアン・ヴドゥーリ(ギリシャ)など多くの図書館に所蔵されている。
https://www.nickosharizanos.com/
プロフィール(演奏者)
出口夢果/Yumeka Deguchi
東京藝術大学音楽学部2年次在籍中。
PMF2022にてデニス・ブリアコフ氏のマスタークラス受講。
大学より海外派遣奨学金を受け、ASAP(アーツスタディ・アプロードプログラム)事業「即興 パリ音楽院vs東京藝大」に参加。
これまでにフルートを藤江汐梨、川口晃、阿部博光、神田寛明の各氏に、現在竹澤栄祐に師事。
林 賢黙/Hyun-Mook Lim
林賢黙(イム・ヒョンムック)は主に現代音楽を演奏するピアニスト。現代音楽の演奏を始めた以来、数々の作曲家と協業しながら作品を演奏し、又は献呈されてきている。
彼女の演奏は音と人間との関わり、特に過去の作品を現代の今・ここの時点で演奏することにおいての演奏者の責任や立ち位置についての興味を表している。彼女が興味を持っている音の表現の方向は音と社会、音と身体、音とジェンダーなどの多方面にまたがっている。しかしそれは単なる再演ではなく、今・ここの時代の演奏者としての創作的なアプローチに基づいている。
彼女は現在東京に滞在しながら韓国と日本両方を中心に活動し、最近はピアノと電子音楽のための作品を用いた演奏経験の拡張と現代のテクノロジーによる作品の復元を中心に演奏活動を続けている。
北嶋愛季/Aki Kitajima
チェリスト・保育士・パフォーマンスコーチ。2013/14 アンサンブル・モデルン・アカデミー生。現在、放送大学教養学部 (心理と教育コース)在籍。 バロックとモダン 2 台のチェロによる独奏演奏会を東京、フランクフルト、ミュンヘンで定期的に開催。国内外の現代音楽祭や演奏会に多数出演。即興デュオ OKA-ARUKI、近現代作品を演奏するトリオみのりて、親子向け演奏会を行う ciel 各メンバー。 www.akikitajima.com
©Shu Nakagawa
會田瑞樹/Mizuki Aita
1988年宮城県仙台市生まれ。2010年日本現代音楽協会主催”競楽Ⅸ”第二位入賞と同時にデビュー以降、これまでに300作品以上の新作初演を手がけ「初演魔」の異名をとる打楽器/ヴィブラフォン奏者。作曲家として2019年第10回JFC作曲賞入選、2021,2023年リトアニア聖クリストファー国際作曲コンクール特別賞を2度にわたり受賞。2022年2月には東京都「アートにエールを!」採択事業として初の自作自演個展を開催。10月には自らが作曲を手掛けた《祭禮—二台のヴィブラフォンのための協奏曲—》を新田ユリ指揮、京都室内合奏団とともに世界初演。2023年10月には全45曲からなる《北原白秋のまざあ・ぐうす》を発表。『今年出会った「新作」の中で、将来の育ち方が最も楽しみなひとつ。リミックスの時代たる21世紀の「創作」』(渡辺和氏)等の賞賛を受ける。2020年発売の最新アルバム「いつか聞いたうた ヴィブラフォンで奏でる日本の叙情」は年間最優秀ディスクとなる第59回レコードアカデミー賞受賞。ヴィブラフォン、現代作品の魅力を多彩に紹介した成果により令和2年度大阪文化祭奨励賞、令和3年度宮城県芸術選奨新人賞受賞。かなっくホールレジデントアーティスト。千代田区立九段小学校”九段planets”サポーターとして指揮者の任にあたるなど、ジャンルを越えた縦横無尽の活躍が続いている。 2024年6月にはタイ・バンコクにおいて新作《日比谷》(萩原恭次郎詩)永野伶実氏委嘱作品《優しい女》両作品は大きな反響を集めた。8月には指揮者として”九段planets”を率いて第72期TBSこども音楽コンクールに楽団創設以来の初参加。9月26日にはリトアニア・ヴィリニュスにおいて、モデスタス・バルカウスカス指揮、聖クリストファー室内合奏団シーズンオープニングコンサートに6年ぶりにソリストとして招かれ、自らが作曲を手掛けた《Stardust —Concerto for Vibraphone and Strings Orchestra—》世界初演は熱狂のスタンディングオベーションに迎えられ圧倒的成功を収めた。11月には渕田嗣代氏委嘱作品《鶯の歌》(北原白秋詩)の初演が予定され、演奏、創作の両面からその音楽性を発揮し続けている。