木村まり ゲスト講義「MUGIC®:音楽家と舞台芸術のための永続的なツールを目指して」
日時:2025年9月18日(木)
13:00 ~ 講義(東京藝術大学 千住キャンパス 第2講義室)
概要

音楽性を深め、革新性よりも熟練を追求する目的で開発されたモーションセンサー「MUGIC®(Music/User Gesture Interface Control)」を紹介します。芸術の新たな可能性や、アートの境界を超えて拡がるユーザーの現状、そして本技術に至った経緯についても触れます。軽量・ウェアラブルなデバイス、MUGIC®は、多くの一時的な技術革新と異なり、表現豊かなジェスチャーをリアルタイムで捉え、サウンドやビジュアル、インタラクティブメディアの制御データに変換します。パフォーマーを念頭に設計され、表現力、アクセシビリティ、長寿命性を重視したこのシステムは、芸術、教育、他の分野においても持続可能なテクノロジー統合のモデルを提供しています。
また、快適性・精度・汎用性を追求したカスタム設計のMUGIC® Glove(手袋)も紹介します。低刺激性かつ通気性に優れた素材を用いたこのウェアラブルは、高速な動きから繊細な動きまでサポートし、医療グレードのベルクロパッチにより、センサーは衣装や小道具、楽器、身体の他の部分に取り付けることもできる柔軟な設計により創造性の可能性を大きく広げています。この夏、障害者のアーティストの表現方法に寄与したとウォール・ストリートジャーナルにも取り上げられ、10年以上にわたる開発と実社会での応用経験(学際的なカリキュラム、リンカーンセンター、ヴェネツィア・ビエンナーレ、2025年大阪万博などの舞台での活動)に基づき、強力で直感的なツールがいかに深い表現力と長期的な芸術的成長を促進するかを解説します。
講師プロフィール

木村まり
桐朋学園大学卒業、江藤俊哉氏に師事。1985年よりアメリカに留学、ボストン大学、ジュリアード音楽院で学ぶ。主にニューヨーク拠点として欧米で活動し、今までにパリのIRCAM、ハンガリーでの国際バルトーク祭、サンフランシスコでのOther Minds音楽祭、メキシコの国際セルバンティーノ音楽祭、国際現代音楽祭(ISCM)など、国際的に招待演奏。1994年のNY・デビューリサイタルは、NYタイムズ紙に「胴目すべきデビュー、時代の先端を弾くヴィルチュオーソ」と絶賛され大きな注目を集めた。
日本でも、岩城宏之氏指揮、アンサンブル金沢と共演、大野和士氏指揮、東京フィルとの共演でヒルボルクの協奏曲の日本初演、また井上道義氏指揮の東京交響楽団とジョン・アダムズのヴァイオリン協奏曲を日本初演。わが国で初めヴァイオリンの調弦を変えずにG線より1オクターブ下の音を弾く「サブハーモニクス」を披露、大きな話題をよび、作曲家の一柳慧氏より「大型ヴァイオリニストの誕生」と絶賛される。1995年には米国音響学会(ASA)にて招待発表、科学界でも大きな反響を呼ぶ。1996年に中島健臓音楽賞を受賞。2007年秋山和義指揮、東京交響楽団とフランス人作曲家ジャン・クロード・リセ作曲のバイオリン協奏曲を自作のカデンツァも含め世界初演。作曲家としては、2010年度グッゲンハイム・フェロー、国際コンピューター音楽祭(ICMC)委嘱賞、その他ロックフェラー財団、NY州芸術評議会 (NYSCA) 、NY芸術協会(NYFA)などより受賞歴多数。カーネギー財団から「アメリカの誇る移民」として、オノ・ヨーコに続き2人目の日本人として表彰される。2020年、芸術表現に革命をもたらすウェラブル・モーションセンサMUGIC®を開発、起業。MUGIC®は現在ハーバード、カリフォルニア大バークレー校、ベルリン芸術大、ジュリアード、ベニス・ビエンナーレといった一流機関で使用されている。2022年には革新性と起業家精神に対し米国下院から議会表彰状を授与。長年ジュリアードで教鞭をとりながら2017年よりカリフォルニア大学アーバイン校正教授に招聘。テクノロジー、作曲と演奏を通して音楽の限界を第一線で押し広げ続ける。2025年に米国電子音響音楽協会賞(SEAMUS生涯功績賞)を受賞。