ニール・オコナー ゲスト講義「(再)コネクション: エミュレーション, 美学 & モジュラー・シンセサイザー」

開催日時:2025年11月4日(火)
時間:13:00~
会場:東京藝術大学 千住キャンパス 講義室2


概要

  本講義では、モジュラーシンセサイザーを用いた作曲における美学的・哲学的アプローチについて探究する。モジュラーシンセサイザーは、電子音楽の作曲により触覚的なアプローチを可能にする楽器である。作曲家・研究者であるニール・オコナーは「(RE)connections: Emulation, Aesthetics & The Modular Synthesiser」を提示し、1950年代にフランス国営放送(GRM)で開発された機器、特にピエール・シェフェールやヤニス・クセナキスが使用した多重ヘッド・テープ楽器「フォノジェーヌ」(1954年)に焦点を当てる。
併せて、オコナーが広く使用しているモジュラーシンセサイザー・モジュールである Make Noise社の「Morphagene」 についても論じる。Morphageneはフォノジェーヌで確立された手法や美学を再現しようとするものである。また、オコナー自身が Max/MSP や Pure Data (Pd) を用いて行っている研究も紹介され、フォノジェーヌの手法を再構築・模倣する試みについても言及される。
さらに、オコナーは自身の幅広い研究成果(Bloomsbury、Routledge、Cambridge University Press などに出版)を踏まえ、現在執筆中の第2著作『Microsound & Glitch – Time, Material and Technology』から、サイバネティクス、エージェンシー、技術決定論といった美学的・哲学的アプローチを取り上げる。これら「再接続」が現代の作曲方法論に挑戦するのか、あるいは補完するのか、そして未来の電子音楽・電気音響音楽制作の方向性にどのような影響を与えるのかを考察する。ハイデガー(1977年)が述べた「技術が人間の制御から逸脱しようとすればするほど、支配への意志は一層切迫したものとなる」という問題意識とも関連づけられる。

ディスカッション

Dr. Neil O’Connor & Michael Schneider
テーマ:怪談展(Kwaidan Exhibition)における議論
内容:在日アイルランド大使館での版画とサウンド・インスタレーションの発展とアプローチについてのディスカッション
 
講師プロフィール

ニール・オコナー

  作曲家・演奏家のニール・オコナーは、トリニティ・カレッジ・ダブリンで学び(修士号M.Litt/博士号PhD 電気音響音楽)、過去20年以上にわたり実験音楽および電気音響音楽の分野に携わってきた。アイルランド、ヨーロッパ、オーストラリア、アジア、アメリカで演奏活動を行い、ニューヨーク近代美術館(MOMA)、IRCAM、ロンドン現代美術研究所(ICA)などで作品が発表された。
また、マサチューセッツ現代美術館やスウェーデン・ストックホルムのEMS(スウェーデン電気音響音楽研究所)でレジデンスを務めた。彼の電気音響作品は、フランス・アラスの Noroit-Léonce Petitot、フランスの Euphonie D’Or des Concours International de Musique Electroacoustique、チェコ共和国の Musica Nova Electroacoustic Music Competition などで受賞・入賞歴がある。
さらに、Bloomsbury、Routledge、Cambridge University Press から研究を発表しており、現在は リムリック大学 電気音響音楽スタジオ(ULEAMS) のディレクターを務めている。