パリ第8大学&東京芸術大学 合同発表会
メディアアートと音楽について探る
パリ第8大学の教授陣と博士課程の学生を招いて、東京藝術大学の後藤研究室の博士課程と修士課程の学生と共に学会を行います。新たなメディアアートの可能性について考え合います。
コロナ感染症対策のため、パリ第8大学の教授陣の来校が延期されました。
場所:
論文発表:東京芸術大学 千住キャンパス 第2講義室
作品発表:東京芸術大学 千住キャンパス 第7ホール&書庫2
スケジュール
10:00 後藤英
ご挨拶
10:30 顧昊倫
記憶、視覚、そして聴取 ~ ライブ・エレクトロニクスの空間創作における作曲家の位置付け ~
11:15 ブロシェック・ニコラス
ミクスト音楽のためのフルート奏法自動判別手法の検討
ーーーーーーーー昼休みーーーーーーーー
13:00 陳珠櫻
人工生命から進化する仮想エコシステムまで
13:45 ジーン・フラーンスワー ジーゴ
アート、ヴァーチャリティ、エコソフィ:(共同の)生き方
14:30 ギャエタン・ヘンリー
バーチャルリアリティにおけるスケッチ活動のエコソフィ:デジタルクリエイターの姿勢の変化に向けて
第7ホール:随時展示
鄭瑀
「re::」
李瓊宇
「Agency」
書庫2:随時展示
田中小太郎
「oscillation room」
概要 & 履歴
人工生命から進化する仮想エコシステムまで
人工生命や複雑なシステムをベースにした作品では、自律的で進化する行動を見せる仮想生命体と観客とのインタラクションモードが展開される。実験的な舞台空間において、人間と人工物の間の共創と即興の出現を促す条件を探る。
陳珠櫻
デジタルアーティスト、パリ第8大学教授。美学芸術芸術学科博士課程 (EDESTA) のメンバー、Arts of the Images & Contemporary Art(AIAC)研究所のデジタルイメージとバーチャルリアリティ研究チーム(INREV)メンバー。彼女の研究と創作は、複雑さのアルゴリズムと、創造、実行、美的受容のプロセスを引き出すことから生じるメタ認知を通じたデジタルアート創造を中心に展開されている。
アート、ヴァーチャリティ、エコソフィ:(共同の)生き方
作品と観客の間に生まれる関係性や没入感を探求するインスタレーションやインタラクティブ・パフォーマンスの旅を通して、バーチャリティが可能にする新しいハイブリダイゼーションを分析し、現在の倫理的、社会的、環境的課題に関する考察を提供する。
ジーン・フラーンスワー ジーゴ
パリ第8大学准教授。Arts of the Images & Contemporary Art(AIAC)研究所のDigital Image and Virtual Reality研究チーム(INREV)のアーティスト兼研究員として、バーチャルリアリティと拡張現実をハイブリッドしたアートインスタレーションやインタラクティブなシアターパフォーマンスの制作に携わっている。現在は、デジタル・アートにおけるインタラクションの生態と美学を研究している。
バーチャルリアリティにおけるスケッチ活動のエコソフィ:デジタルクリエイターの姿勢の変化に向けて
バーチャルリアリティ(VR)における創造的プロセスがどのようにエコソフィーの概念を具現化しうるかを探る創造性に関する実験的研究であり、ライブパフォーマンスとポストデジタルのためのAIと集団的想像力に関する視点も具現化する。
ギャエタン・ヘンリー
2020年より、研究を通じた研修に関する産業協定(CIFRE協定)の枠組みでシャネルに勤務する博士課程学生。シャネルのための新しい美学の特徴づけに取り組んでいる。また、活動分野のデジタルおよびエコロジーの移行に関する考察と関連した、集団的またはパフォーマティブな創造的実験の開発も行っている。
ご挨拶
東京藝術大学、後藤研究室における、最新のメディアアート、AIなどの研究、作品制作について紹介します。
後藤英
作曲家、ニューメディア・アーティスト。国際的に評価されており世界活地で活躍。仏、英、独、日の4カ国語を巧みにこなし、新たなテクノロジーと関連させた斬新で刺激的な作品を世界中を発表している。作曲をアメリカ・ボストンのニューイングランド音楽院にて、アール・ブラウン、ロバート・コーガン、ルーカス・フォス、ドイツのベルリン芸術大学では、ディーター・シュネーベル、フランスではIRCAMにてトリスタン・ミュライユとブライアン・ファニーホウに学ぶ。フランス、IRCAMの招待作曲家、研究員、ボルドー芸術大学の准教授を経て、2017年の東京芸術大学に就任。1995年、マルティ・メディア・オペラ作品、”NADA”がベルリンのシャウルシュピール・ハウスにて演奏される。同年より、IRCAMにてコンピューター音楽を研鑽し、その後、研究員として、ジェスチュアル・インフォマティックの開発に携わる。2000年、東京フィルハーモニによりオーケストラ作品”ResonanceII”がオーチャード・ホールにて初演された。2003年、IRCAMのレゾナンスのフェスティバルでポンピドゥー・センターにてソロ・リサイタルを行い好評を得る。2006年、イギリスのAVフェスティバルより委嘱され、作品は話題となった。 2009年にはイタリア、第53回ヴェネツィアビエンナーレに招待された。著書に『Emprise〜現代音楽の系譜から、コンピューター・ミュージック、エレクトロニック・ミュージック、ニュー・メディア・アート、新たなパフォーマンスへの進化』(2016年、スタイルノート)がある。
記憶、視覚、そして聴取 ~ ライブ・エレクトロニクスの空間創作における作曲家の位置付け ~
「空間」を1つの音楽のパラメータとして利用すべきだと提唱されるのは、70年前もの出来事であったが、作曲家に重要視されていない状況が今でも続いている。幸い、録音技術や音響技術の発達により、マルチチャンネルの電子音響音楽の創作に意味づけられており、デニス・スモーリやナタシャ・バレットを始め、多くの作曲家がこの領域に身を投げ、いくつかの空間作曲理論を提案してくれた。ある意味では、「普及」されつつある。しかし、電子音響音楽といえば、狭義ではほとんど「聴覚のみ」という表現の仕方になっており、パフォーマーや演奏家のいるライブ・エレクトロニクスかミクスト作品であれば、状況が大幅に変わってしまう。トランスモーダル(多感覚統合)の存在により、演奏家などという視覚情報と空間全体を回る聴覚情報との関係を事前に考慮しておかなければ、観客が作品、及び作品における空間への理解の低下が避けられない。ナタシャ・バレット曰く「この問題を自分の創作美学に組み入れる方法を見出さなければならない」とのことである。空間に対する認識は、人間それぞれの記憶と経験に頼るため、空間音楽作品における内容や意図を観客に理解させるには、きちんとした「描写」、いわゆる、空間、及びそれらの変化を具象化できる構成のアプローチが必要になってくる。空間をただの作曲上の概念として留まらせるわけにはいかない。本研究は、発表者の博士研究の一部であり、視覚と聴覚に対する同時考慮が必須になった以上、作曲家はいかに作品構成を練り上げるかを議論する。現在、空間化に対してどのような関心が持たれているかということから始め、先行研究や作品例、及び自作を通じて、空間進行性(聴覚的構成)と視聴覚連携(視覚的構成)を2つの切り口として空間創作方法論について検討してみる。
顧昊倫
中国・蘇州市生まれ。 2017年、上海音楽学院音楽設計と制作科を主席で卒業、2020年東京藝術大学音楽音響創造修士課程修了。現在、同大学院博士課程在籍。2021年より文部科学省奨学金(SGU枠)奨学生。 2021年第3回上海国際電子音楽コンクール(IEMC)電子音楽作曲部門第1位。これまでに、作曲家として日本国立科学博物館電子楽器100年展、未来・伝統ニューメディアマスタークラス(上海)に招待され、作品は、上海国際電子音楽週間(EMW)、ニューヨーク電子音響音楽祭(NYCEMF)、国際コンピュータ音楽会議(サンティアゴ)、アンサンブル・アッカ20周年記念コンサート等に入賞、入選、世界各地で演奏されている。第7回両国アートフェスティバル委嘱作曲家。 これまでに作曲を秦毅、尹明五、陳強斌、Eric Arnal、西岡龍彦、後藤英の各氏に師事。
ミクスト音楽のためのフルート奏法自動判別手法の検討
本発表では、生楽器演奏と電子音を組み合わせるミクスト音楽(musique mixte)において、奏法に応じて音響エフェクトが動的かつ自動的に切り替わるようなインタラクティブ・システムの実現に向けた研究について報告する。その根幹部分として、フルート奏法の自動判別のタスクを設定し、複数の機械学習手法を適用した実験結果を示す。
ニコラス ブロシェック
2022年:東京藝術大学音楽音環境創造科 研究生(後藤英研究室)
2021年:ストラスブール高等音楽アカデミー作曲研究科作曲専攻修士課程 修了
2019年:パリ第8大学大学院音楽学研究科音楽理論専攻 修了
2017年:パリ第8大学 音楽学部 卒業
2014年:音響工学高等国家ディプロマ 卒業
「re::」
この作品は、音、レーザー光線、空間を融合することで、物理的/デジタル的、空間的/時間的、心理的/身体的、仮想的/現実的な二項対立関係の境界線を曖昧にする試みである。
鄭瑀
中国福建省生まれ。東京を拠点に活動するメディアアーティスト。音楽、光、および空間を融合することで、新しい知覚体験を探求している。現在、東京藝術大学大学院音楽音響創造科修士課程に在籍。
「Agency」
本作品では、ジェスチャーとLEDライトから構成されたインタラクティブ作品である。出演者のジェスチャーで象徴された人間の主観意識を異なる視点を象徴したLED光線、環境を象徴した音を融合、関わり合うことで、すべての行動がソーシャルネットワークを通じて常に見知らぬ人に評価される現代人は、自己防衛のために表現感覚を長い間抑制し、その結果、人間の行為主働性を失っているだろうか。 この作品は、これを出発点として検討することを目的としています。
李瓊宇
中国徐州市生まれ。
2018年東京藝術大学音楽音響創造研究生。
2021年洗足学園音楽大学音楽音響デザイン専攻中退
現在、東京藝術大学音楽音響創造修士課程在籍。
インタラクティブミュージック、メディアアートなどを後藤英、森威功の各氏に師事。
モーターの回転数によって共振を起こす素材が変化し、常に別の音響が空間を満たす。
田中小太郎
東京芸術大学音楽環境創造科四年。金属素材を用いたサウンドインスタレーションや、パフォーマンス作品の制作等の活動を主に行う。